質量分析計の測定データ解析にAIを活用、富士通と島津製作所 – 日経テクノロジーオンライン



 島津製作所と富士通、富士通研究所は2017年11月13日、島津製作所の質量分析計から得られる大量のデータ解析に人工知能(AI)を活用できる道筋がついたとする研究成果を発表した(島津製作所のニュースリリース富士通のニュースリリース)。

 AIを活用した新規ビジネスの創出を狙う富士通と、「煩雑なデータ解析を高い精度で自動化したい」という顧客の声を受けた島津製作所の思惑が一致し、3者は2016年11月からデータ解析の自動化に向けたAIの共同研究を行っている。

 質量分析計は病気の早期発見や食品の残留農薬測定など様々な分野で用いられているが、感度および速度の向上によって得られるデータ量が膨大になったために、データ(グラフ)から波形の幅や高さを読み取る「ピークピッキング」と呼ばれる解析工程がボトルネックになっていた。ピークピッキングでは手動による調整がある程度必要になるが、手作業では作業者の癖や改ざんが入り込むなど、解析の確度に差が生じる可能性もある。このため、特に医療や創薬の現場では高精度な自動化が求められているという。

 3者はこれらの課題解決に向けて、ディープラーニング(深層学習)の適用を検討してきた。しかし、「教師データが十分に存在しないこと」と「分析機器が出力する数値をそのままディープラーニングネットワークに入力すると学習が進まないこと」が問題となった。そこで、島津製作所は「教師データの不足分を補うデータを生成する技術」を開発、富士通と富士通研究所は「分析装置の出力の特徴を画像に変換する技術」と「熟練作業者の解析ノウハウを学習する特徴抽出技術」を開発した。これにより、生成した3万数千件の教師データをディープラーニングネットワークに学習させることができたという。熟練作業者の手動によるピークピッキング結果を「正常範囲」としたうえで、AIによる自動ピークピッキング結果をこの正常範囲と比較したところ、誤検知率が7%、未検知率が9%だった。この結果は、ピークピッキングの自動化にAIを活用できる道筋を示すものだとする。

 開発したAIの最初の活用先は「メタボロミクス」研究。メタボロミクスは、代謝産物を検出して、その挙動から細胞について調べる技術。生理・病理機構の解明や、疾患のバイオマーカー探索などでの利用が期待されており、今回の研究成果について2017年11月13日と14日に大阪で開催された「第11回 メタボロームシンポジウム」で発表した。島津製作所は、2017年4月からの中期経営計画で「アドバンスト・ヘルスケア」領域に注力することを発表しており、メタボロミクス研究もその一環である。今後、富士通と島津製作所は、2018年に今回のAIを質量分析計用ソフトウエアに搭載することを目指す。




こんな記事もよく読まれています



コメントを残す