LED化進むさんま棒受網漁業、青色LEDはイカ釣りにも効果 – 日経テクノロジーオンライン



 漁業や養殖業において光は、作業照明、生物や藻類の飼育環境の調整、そして生物の行動制御のために主に利用される。本稿では、特に漁業において生物の行動を制御するために使用される光の利用について解説する。

 漁業では、夜間に漁具が作用する範囲内に生物を集めて密度を高めたり、そこに一定時間滞留させたりするために人工光(以降では灯光と呼ぶ)を用いることが多い。灯光は特に、水面近くに分布する、いわゆる浮魚類を対象とするまき網漁業や棒受網漁業、いか釣り漁業(図1)*1で盛んに使われてきた。さんま棒受網漁業、いか釣り漁業、灯光の利用が許可されているまき網漁業の2014年の漁獲量の合計は約109万トンで、我が国の漁獲量の約3割を占めている(図2)*2。この数値には、灯光を使わずに昼間に操業されるいか釣り漁業の漁獲量も含まれるが、一方で灯光を利用するサンマ以外を対象とした棒受網漁業や灯光利用の釣り漁業の漁獲量は含まれていないので過小推定の可能性が高い。漁業における灯光の利用は我が国に限らず、世界中でみられるが、特にアジアや地中海沿岸の国々で盛んである1)

*1 農林水産省,漁業種類イラスト集 http://www.maff.go.jp/j/tokei/census/gyocen_illust2.html

*2 農林水産省,平成26年漁業・養殖業生産統計 http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/index.html

図1 灯光を用いる主要な漁法*1

©農林水産省

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図2 2014年の我が国の主要漁業種類別漁獲量*2

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 漁業における灯光利用の歴史は、主に光源の変遷と出力増加を経て今日に至る。20世紀半ばまでの漁業には松明や石油ランプ、アセチレンランプなどが光源として用いられてきた2)。電灯の漁業への導入は1930年頃から始まったが3)、実際には1950年以降に長崎県のまき網漁業を中心に西日本、そして順次、東日本に普及していったとされている2)。当初、光源には白熱電球が使用されたが、次第にハロゲン電球、各種放電灯などへと移り変わっていった。近年ではLED の導入も進められている。また光源の電化にともない、水中灯が使われるようにもなった。現在、まき網漁業ではメタルハライドランプとハロゲン電球が船上灯および水中灯として、さんま棒受網漁業ではハロゲン電球、メタルハライドランプ、LED が船上灯として、いか釣り漁業ではメタルハライドランプ、ハロゲン電球が船上灯として一般的によく使用されている。

 漁業者は光源の出力を増加して、より遠くより深くまで光を届けることでより多くの生物を集められることを経験から知っている。そして行政や漁業者団体は、光源の出力の増加が経営やエネルギー消費の効率をないがしろにした光力競争につながらないように、電灯の出力の上限値を決めてきた。それにもかかわらず漁業者は常により強い光を求め、光源の出力は1970年代以降に急激に増加した。長崎県沿岸域のいか釣り漁業を例とすると、1972年には長崎県壱岐周辺の集魚灯規制は距岸20海里以内では電力3kW 以内であったが、メタルハライドランプの普及が始まった頃の1982年の対馬海区の12海里以内は10kW に、1990年には60kW にまで増加した。また、12海里より沖合いで操業する船については、1994年には上限を180kWに自主規制したが、2009年にはこの値を160kW に下げた4)。このように沿岸域だけを見ても、約40年間で光源出力の上限値は約50倍に増加した。しかしこの間に1隻あたりの年間漁獲量の増加は10倍にも達していない(図3)5)。いか釣り漁業に限らず、灯光利用漁業は光源の出力を大きくしてより多くの対象生物を自船の周りに集めようとする競争を行ってきた。しかし、近年の燃油価格の高止まりや魚価の低迷は、こうした出力の増加が利益の増加にはつながらない経済的に持続的ではない状況をつくりだしている。漁業における灯光利用は出力だけの競争を脱却する必要がある。



図3 長崎県の20トン未満いか釣り漁業における集魚灯光源の変遷と年間漁獲量の変化

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