大発明!? 丸めるとライトになる“魔法の紙”(日経トレンディネット)



 市松模様柄がプリントされた、一見、何の変哲もないA4より一回り小さいサイズの紙。しかし、不思議なことに円筒状に巻くとライトが点灯し、懐中電灯に早変わりするから、何かの手品か、あるいは魔法かと驚きを禁じ得ない。この斬新な「ペーパートーチ」という製品の秘密は、紙の市松模様にある。実はこれが特殊な銀粒子インクで印刷された電子回路になっており、くるっと巻くと、紙の内側に配置されたボタン電池から極小LEDライトに電気が供給され、光る仕組みになっているのだ。

【関連画像】ソフトバンクとnendoが共同運営する「DoT.」の販売サイト。第1弾商品のペーパートーチは50個限定で、税込み8640円

 佐藤オオキ氏が率いるデザインオフィスのnendoと、100年を超える老舗の紙専門商社の竹尾、東京大学発のベンチャーAgICの3社コラボで開発され、ソフトバンクが運営するクラウドファンディング系サイト「+Style」とnendoが共同運営する商品開発プラットフォーム「DoT.(Design of Things.)」(販売サイトはこちら)で3月初めに発売された。製品誕生の裏側を、開発に携わった3社に聞いた。

市松模様のデザインで電子回路を“隠す”

――円筒状に巻くだけでライトが点灯する、何とも不思議な紙ですね。

nendo:紙やフィルム、布などに銀粒子を使ったインクをプリントすることで電子基板を作れるというAgIC社の技術を活用してデザインした懐中電灯です。紙の表裏にプリントしている電子回路には市松模様のデザイン処理を施し、ボタン電池2個とLED7個を導電性のある接着剤で接着しています。

――これをくるっと巻くと、紙の内側に配置されたLEDライトが点灯して即席の懐中電灯になる。どんな仕組みになっていますか?

AgICの杉本雅明氏(以下、杉本氏):紙に印刷された市松模様ですが、よく見ると、小さな正方形の角同士がところどころ線で結ばれていて、これが電気の通り道になっています。「プリンテッドエレクトロニクス」という技術を使い、当社がチューニングした特殊なプリンターで印刷しています。電源は紙の表面の左端にあるボタン電池で、上がマイナス極、下がプラス極になっており、それぞれが市松模様の電子回路の経路をたどってLEDにつながる構造になっています。

 しかし実は、表面の底辺から2段目と3段目の間は、左端の一部の正方形を除いて、線で結ばれておらず、そのため、紙が真っ平らな状態では通電しません。ポイントは、裏面の下部に印刷された太い帯状の回路。LEDや電池が内側になるように円筒状に巻くと、この帯が表面の2段目と3段目にちょうど重なって同時に接触するため、帯を介して通電してLEDが光るというわけです。

――さらに不思議なのが、紙をキュッと細く巻くとライトが明るくなり、ゆったりと太く巻くと暗くなります。これはどういう原理ですか?

nendo:LEDの経路の距離を、紙の巻き加減で調整することで抵抗値を変化させ、調光ができるようにしています。つまり、経路の距離が長いほど抵抗値が高くなり、反対に距離が短いと抵抗値が下がることから、紙をゆったり巻くと光が弱くなり、きつく巻くと強くなるわけです。

杉本氏:市松模様に目を凝らすと、細い線が蛇のようにクネクネとうねった模様の正方形があることがわかります。これが電気を通りにくくし、いわゆる「抵抗器」の役割を果たします。この抵抗器は表面の右側に行くほど多くなるように印刷されています。そのため、ゆったり巻くと、電池からLEDに到達するまでに、より多くの抵抗器を通らざるを得ず、抵抗値が高くなってライトが暗くなり、逆にきつく巻くと、経路に抵抗器が少なくなることから抵抗値が低くなって、ライトが明るくなるという原理です。

 室内照明の調光機能も同様の原理で、明るさを調整しています。あるいは、DJが使うような音響機器のボリュームも同じ原理です。つまみを時計回りに回すと抵抗が少なくなるため音量が大きくなり、反時計回りに回すと、抵抗が大きくなるので音量が小さくなります。ただし、これらは基板(電子回路)が壁の中、あるいは筐体の中に隠れていて見えません。それに対し、ペーパートーチはいわば基板が外に剥き出しになっている。

 このデザインの優れている点は、剥き出しになっているのに、それが電子回路に全く見えないことです。単なる市松模様にしか見えない。通常、電子回路は筐体などの中に隠して見えないようにしますが、これは、デザインで回路を“隠している”わけです。だから、何で光が点灯するのだろうと不思議に思って、原理を説明されて初めて仕組みがわかる。まさに、センス・オブ・ワンダーをかき立てられる、デザインの力と言えるでしょう。

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