羽生結弦選手が滑るショパンのバラードってどんな曲?

フィギュアスケートと音楽

スケート靴の写真

音楽はスケーターの演技を盛り上げる大切な要素

ジャンプやスピンといった技術だけではなく、音楽に合わせた演技の表現力も点数に反映されるフィギュアスケート。芸術的要素を含んだ華麗なスポーツとして人気です。演技のテーマとなる音楽。スケーターが最高のパフォーマンスを披露するために、曲選びは重要なポイントとなります。

五輪イヤーの今季、連覇を賭けた羽生結弦選手がどのような曲を選ぶのか注目されていましたが、意外にも選んだのはショート・フリープログラム共に過去に使ったことのある曲。ショート・プログラムは3度目の再演となるショパンのピアノ曲、バラード1番でした。

そこで今回は、羽生選手の勝負曲、ショパンのバラード1番についてプチ知識をご紹介しましょう。曲について少し知るだけで、羽生選手の演技がより一層魅力的に見えてくるはず!

ショパンってどんな作曲家?

ショパンという名前は知っていても、それ以上のことはよく知らないという人は意外に多いもの。作曲家のプロフィールを知っていると、曲への親しみがぐっと増します。

ピアノの詩人、ショパン

ショパンは1810年、ポーランドで生まれました。21歳の時に活動の場を広げるために祖国を離れてからはフランスに居を構え、作曲家・ピアニスト・ピアノ教師としてキャリアを積み、ヨーロッパ中に名声を広めていきます。

ショパンが生涯に残した作品のほとんどはピアノ曲で、その数は約230曲。ロマンチックな美しい旋律と抒情的な作風から「ピアノの詩人」と呼ばれるようになりました。

プライベート・ライフ

身に着けているものはいつもシックでエレガントな高級品。そして上品な社交マナーで振舞うショパンは、女性にとても人気があったそうです。しかし、婚約を交わした女性や10年近く生活を共にした有名作家との恋を経るも、生涯結婚することはありませんでした。

祖国ポーランドへの思い

ポーランドを出た直後、当時、国を支配していたロシアに対して反乱が勃発。政情の不安定さから、愛する母国へショパンが再び戻ることはありませんでした。

生涯抱き続けた望郷の念は、ポーランドの民族的な舞踊音楽であるマズルカ、ポロネーズといったジャンルの曲を数多く残していることからも計り知ることが出来ます。

若い頃から患っていた肺結核の悪化により、39歳という若さでこの世を去ったショパン。遺言により、心臓だけが壺に納められポーランドへの帰郷を果たしたのでした。

ショパンの写真

晩年のショパン (1849)

「バラード1番」ってどんな曲?

「バラード1番」はショパンが21~25歳の時に書かれた作品。バラード全4曲中、一番有名な曲です。羽生選手の演技では、制限時間に合わせて3分程に編集されていますが、実際は10分程の長さで、演奏するには上級レベルのテクニックが必要です。

作曲のきっかけは愛国心あふれる詩

この曲が生まれたのは、ショパンがポーランドの詩人による次のようなあらすじの詩を読み感銘を受け、インスピレーションを得たからだという説があります。

詩人、ミッキェヴィッツの「コンラード・ヴァーレンロット」

かつて十字軍に敗れて独立に失敗したリトアニアの王子、コンラード・ヴァーレンロットは、年月を経て勇敢な騎士として十字軍を指揮するまでになった。しかし彼の本望は故国の再建にあった。策略をもって、彼はついにリトアニアは独立を成し遂げる。だが、自らは裏切り者として処刑される。

出典:『ショパンを読む本』 ヤマハミュージックメディア 1999年

ただし、ショパンの音楽はこの詩のあらすじをそのまま音で描写したものではありません。詩に登場する主人公の強い愛国心が、当時故郷の内乱に憂い悲しんでいたショパンの心に響き、バラード1番を生み出す原動力となったのでしょう。

「さあ、いよいよこの壮大な物語がはじまります!」と語っているかのように、おごそかな雰囲気で幕を開けるバラード1番。哀愁に満ちた旋律で物語が始まると、曲は速度を増して情熱的に盛り上がったり、軽やかに旋回したり、遠い昔に思いを馳せているように穏やかになったりと次々場面展開しながら、最後のクライマックスへと導いていきます。

バラード1番を聴く、弾く、観る!

■バラード1番を聴いてみましょう!
ショパン:バラード1番 作品23 (ピティナ公式サイトより)

■原曲で演奏するにはかなりの技術を必要としますが、易しく編曲された短いバージョンなら気軽にチャレンジできるかも?

ピアノで弾く フィギュアスケート名曲集

金メダルを賭け、以前より難易度の高い演技構成で滑る3シーズン目のショパン「バラード1番」。アスレチックな技とエレガントなショパンの世界を、羽生選手がどのように融合させ表現しているのか? 音楽にじっくり耳を傾けながら、ぜひ観てみてください!

梅雨どきのピアノトラブル~解決法と予防策

ピアノにとっても憂鬱な梅雨

ジメジメして不快指数の高い梅雨。傘をさしながらの外出も億劫になり、家でゆっくりピアノでも楽しもうか……と弾き始めたら音に異変が!なんていうことも。木とフェルトが使われているアコースティック・ピアノにとって、湿気の多い梅雨はトラブルが起こりやすい憂鬱な季節。

そこで今回は、梅雨を上手に乗り越えるためのピアノ・ケアについて、ドイツの国家資格「ピアノマイスター」の称号を持ち、横浜市でピアノ工房を開いている伊藤正敏氏にお話をうかがって来ました。

ピアノマイスター伊藤正敏氏の写真

ドイツがピアノ職人に与える最高国家資格である「ピアノマイスター」の称号をもつ伊藤正敏氏(横浜市青葉区の伊藤ピアノ工房にて)

梅雨どきに起こりやすいトラブルとは?

Q:梅雨になると起こりがちなピアノのトラブルには、具体的にどんなことがありますか?

A:通常、冬から春にかけての乾燥期間に部屋に置いてあるピアノは、中の木も乾燥しています。ところが、梅雨になり急激に湿度が高まると、ピアノの木材の部分が膨張し、それによって弦の張力が増したり、中の部品が変化し、部分的に音が狂ったり全体的なピッチ(音程)が変わるなど、ピアノの音が狂うことがあります

Q:以前、梅雨どきに私のピアノの鍵盤が下がったまま戻って来なくなり、練習が出来なくて困ったことがありましたが、それも湿気のせいでしょうか?

A:はい、アクション部品の木材やフェルトが湿気を吸う事により膨張し、様々な障害が起こることがあります。これは「スティック」と呼ばれる現象で、ピアノのアクション部分(メカニズム)の動きが鈍くなることが原因で、鍵盤が下がったまま戻らなくなるとか、鍵盤は動いているのに音が鳴らないなどのトラブルが起こることがあります。

Q:その他にはどのようなトラブルがありますか?

A:ピアノ全体が湿気を帯びると楽器全体の鳴りが悪くなる事があります。また、メカニズムの中の木材が曲がったりねじれたりすると、タッチのばらつきだけでなく、音色にもばらつきが生じることがあります。

梅雨どきに起こりやすいトラブル

□部分的に音が狂う

□全体的なピッチ(音程)が変わる

□鍵盤が下がったまま戻らなくなる

□鍵盤は動いているのに音が鳴らない

□タッチや音色にばらつきが出る

ピアノと雨模様のイラスト

湿度の高くなる梅雨の時期は、ピアノにとってもトラブルの起きやすい憂鬱な季節

トラブルが起きてしまった時の解決法

Q:湿気によるトラブルが生じてしまったら、どうすればいいのでしょうか?

A:アクション部分のトラブルや音色の変化が起きた場合は、一度部屋をエアコンで乾燥させてみて下さい。大抵どのエアコンにも除湿機能が付いていますので、1日~2日除湿して様子をみます。それでもダメな場合は、調律師に頼んで状態を整えてもらいましょう。



 

Q:エアコンで部屋を除湿してトラブルが解決すれば、特に問題はないということですか?

A:残念ながら、一度湿気を帯びて狂ってしまったピアノの音というのは、その時は直ったように感じたり、季節が巡り乾燥期になったとしても完全には元に戻りません。できれば一度調律師を呼んで、しっかりみてもらったほうがいいですね。

トラブル解決法

□部屋をエアコンや除湿機で乾燥させてみる

□調律師を呼んで直してもらう

伊藤氏が調律している写真

一度トラブルの起きてしまった音は完全には元に戻らない。プロの助けを借りよう

梅雨どきのトラブル予防策

Q:梅雨どきのトラブルを予防するために出来ることはありますか?

A:部屋の湿度をコントロールすることがポイントとなります。ピアノにとって適切な湿度は55%です。ピアノのそばに湿度計を置いておき小まめにチェックし、なるべく部屋の湿度を55%にキープするようにしましょう。



 

Q:エアコンの除湿機能を使えばいいのですか?

A:そうですね、家庭用のエアコンには大抵除湿の機能が付いていますから、一番手っ取り早く除湿するには使えます。ただ、ひとつ気をつけなければいけないのは、エアコンの除湿機能は気温を下げることになりますので、梅雨どきなどには寒くなり過ぎてしまうことがあります。やはり湿度をコントロールする為には、除湿器が良いと思います。これは、温度を下げることなく除湿ができます。

Q:梅雨どきのトラブル予防のキーワードは、ひとえに「除湿」なのですね。除湿機に頼る以外、他に方法はないのでしょうか?

A:基本的にはそうなのですが、せっかく湿度を調整しているのに、うっかりと自分で湿気を部屋に持ち込んでいる場合もあるのですよ。たとえば、土砂降りの雨のなか帰宅した時に、雨に濡れたレインコートや上着などを着たままピアノの部屋に入ったり、脱いで持ち込んだりすると、急激に室内の湿度が上昇してしまいますので注意してくださいね。

トラブル予防策

□湿度計を置き、除湿機やエアコンを使って部屋の湿度を55%に保つ

□濡れた服、レインコートを部屋に持ち込まない

エアコンの写真

ピアノに最適な湿度は55%!梅雨どきだけではなく年間通してチェックしよう

人にとってもピアノにとっても嬉しくない梅雨の湿気ですが、除湿器やエアコンを使って湿度をコントロールすることによって、ピアノを良い状態に保つことは可能です。湿度をチェックする習慣をつけて、トラブルフリーで上手に梅雨を乗り越えましょう!