登場から7年、iPadがついに「大きなiPhone」から脱却

iOS 11の登場は、後にふり返った時にタブレットの将来を変えたターニングポイントになる……こう言っても過言ではないほど、iPadに大きな変化をもたらしました。

iPad Proは、iOS 11で大きく変化した

iPadは、iOS 11で大きく変化した

多くの人にとってiPadの利用用途は、映画を観る、電子書籍を読んで楽しむといったものがメインでした。iPhoneでも同様の使い方は可能ですが、「iPhoneよりもより大きな画面で楽しめる」という点に多くの人が価値を感じて手にしたワケです。それは同時に「大きなiPhone止まり」という影がチラつくことも意味します。

しかし、iOS 11の登場によりその認識に大きな変化が訪れました。分かりやすく言えば、iPadにしかできないことが多くなったワケです。初代iPadの登場から7年目にして、ようやく「大きなiPhone」を脱却したのです。

今回は、大変化を遂げたiOS 11とiPadの組み合わせを詳しくご紹介していきます。

大きく進化したiPadのマルチタスク

iOS 11のiPad向け新機能としては、ファイルアプリケーションの追加、ドラッグ&ドロップの追加、Apple Pencilのサポート強化などがありますが、とくに注目なのは、より直感的になったマルチタスク機能の強化です。

iOSは前面のアプリしか動作しないシングルタスクから始まり、限定的ながらバックグラウンドでも処理が動作するようになり、近年では、アプリの切り替えや2種類のアプリを同時に使える仕組みを追加するなど、マルチタスク機能を向上してきました。

iOSのベースととなっているのはmacOSなので同じレベルのことができて当然とも言えますが、ユーザーの習熟度とハードウエアの進化に歩調を合わせ、機が熟したタイミングで新たなOSを投入してくるタイミングの良さは、長年コンシューマー向けOSを手掛けるメーカーだけのことはあります。

それでは、マルチタスクに関わる注目点を順に見ていきます。

新たにDockが搭載された

分かりやすいところでは、画面の一番下にアプリランチャーの「Dock」が表示されるようになりました。これは、画面の下から上に小さくスワイプすることで、どこからでも呼び出せて、登録したアプリアイコンをタップすれば、開いたり切り替えたりできるので、ホーム画面へ戻るひと手間を省けます。

Dockは、アプリを開いている時も表示できる

Dockは、アプリを開いている時も表示できる


Dockからアプリを開く方法は2種類あります。まず、全画面でアプリを開く場合は、アプリアイコンをタップするだけ。2つ目のアプリとして起動する場合は、アプリアイコンを長押しした後、前面のアプリの上にドラッグ&ドロップします。これは、iOS 11で新たに持ち込まれた操作で、使い始めは戸惑いますが、後に続くSplit Viewの操作と連続性、関連性が上手く整理されていて慣れれば感覚的に使えます。

Dockの見た目は、macOSのそれと似ていますが機能的には異なります。たとえば、macOSのDockは、アプリのショートカットを登録するのに対して、iOS 11はアプリ本体を登録するので、ホーム画面には表示されなくなります。また、macOSのDockはタスクマネージャーも兼ねていますが、iOS 11は同じ機能がなく、右側に最近開いたアプリとおススメアプリが3個表示されます。

iOSの操作は「ことを成す道筋は常に1つであるべき」というポリシーが適用されており、シンプルな操作系を保っています。しかし、Dockが追加されて、アプリを開く方法は複数になりましたが、登録したアプリはショートカットとはならず、これまで通りにアプリがひとつの状態が保たれているので、無用な混乱が生まれない配慮がなされています。

使い勝手とUIが刷新されたコントロールセンター

画面を下から上に大きくスワイプすると、アプリの履歴表示が追加されたコントロールセンターを表示できます。

使い勝手とUIが刷新されたコントロールセンターは使いやすくなった

使い勝手とUIが刷新されたコントロールセンターは、さらに使いやすくなった

アプリ履歴は、使ったアプリだけではなく、そのアプリの画面分割状態までが保持されてサムネイルで確認できます。たとえば、Split Viewで、画面左にエディター、右にウェブブラウザーを開いて等分割したとすると、この状態がそのまま保持されてサムネイルをタップすると復元されます。

iOS 11では、マルチタスク機能の向上で、より多くのアプリを使うと想定されたのか、アプリ履歴には多くのアプリが表示されて一覧性が向上しましたしたので、以前より目的のアプリが探しやすくなりました。また、画面分割の状態を保持して復帰するので使い勝手が格段に良くなりました。

刷新されたコントロールセンターは、これまでどおりホームボタンのダブルタップでも表示されます。

Split ViewとSlide Overは健在

iOS 9でアプリを2つ並べて使う「Split View」や画面の右端からスライドして呼び出す「Slide Over」、画面端に小画面を表示する「ピクチャー・イン・ピクチャー」が実装されました。このうちiOS 11では、Slide Overが大きく変わっています。

iOS 11のSlide Over操作は、Dockから開くアプリを選んでDockの外にドラッグすると、アプリアイコン付のフローティングウインドウとして表示されます。この状態で指を離すと縦長のウインドウでアプリが開いて画面右端に表示されます。

Slide Overは、使い勝手が大きく変わった

Slide Overは使い勝手が大きく変わった

Split Viewの場合は、Dockからアプリを画面右端までドラッグすると黒い帯が表示されるので、ここにアプリをドロップすると画面4分の1ほどで表示されます。あとは、これまでのSplit Viewと同じでアプリ境界の黒いバーをドラッグして分割率を調整します。

Split Viewは変わらない使い勝手

変わらない使い勝手のSplit View

iOS 11のタスク管理は、画面の下から始まり画面右に移動して終息する流れでデザインされています。タブレットで操作の流れを意識させる作りは珍しく、iOS 11がはじめてかもしれません。この流れができたためか、作業中も思考が途切れが少なくなり、やるべきことに集中できるようになりました。

ルールチェンジがこれから始まる

この原稿は、iOS 11をインストールしたiPad Pro 12.9(第一世代)とSmart Keyboardの組み合わせで書き上げました。iOS 10に感じた日本語入力のもたつきは感じませんし、日本語変換もイライラが募ることはなく、気持ちよく使えるようになりました。これまで使っていたiPad Proが生まれ変わったようです。

Appleはルールチェンジを得意とするメーカーです。今後、iPadとiOS 11の組み合わせで、タブレット、そして、PCのルールチェンジが行われていくはずです。期待して見て行きましょう。

ノートPCの再発明?iOS 11でiPad Proが大きく変わる

iPad ProはノートPCの再発明になるのか

Appleが開催したWWDC 2017のキーノートでは、SiriスピーカーのHome Podやプロ向けにスペック強化されたiMac Pro、10.5インチのiPad Pro、リニューアルされたMacBook Proシリーズなど多くのハードウエアが発表されました。一方で、ソフトウエアもiOS 11を始め、tvOS 11、watchOS 4、そして、macOS High Sierraとハードウエアに負けない充実の内容でした。

iOS 11とiPad Proは注目の組合せ

iOS 11とiPad Proは注目の組合せ。

今回の発表で筆者がとくに注目したのは、iOS11とiPad Proです。

Appleが進める「iOSファースト」のOS戦略の中で、いままでiPad ProはiPhoneの影に隠れがちでしたが、今回の発表で立ち位置が明確になり、iOS 11とiPad Proのコンビで、PCが持つ生産性を追求することが明確になりました。

iOS 11を得たことで我が道を歩くiPad Pro

iPadは、タブレットの代名詞になるほど成功して広く使われるようになりました。結果、「観る」「読む」などのビュワーとしてだけでなく、ノートPCの代替として使いたいユーザーも多くなりました。

これに応えるべく、AppleはiOS 9でマルチタスク機能を向上させるなど、テコ入れを実施。しかし、生産性が求められる現場においてはまだ機能不足だったために、iOS 11でさらなるテコ入れが行われました。

今回のテコ入れは、ここ数年の流れからは真逆とも思える方針転換で、iPad ProにmacOSの操作性を取り入れて、同じiOSを使うiPhoneとは別の存在になろうとしています。

たとえば、どの画面からでもアクセスできて、すばやくアプリが起動できるDockはmacOSのそれと似ています。ここからアプリを起動するとSlide Overのように、起動中のアプリの上にウィンドウ表示されます。さらに、操作を行うとSplit Viewになり画面が2分割されて、ふたつのアプリが起動します。

もうひとつ、画面を2分割した状態で、写真管理アプリからドラッグで写真をメールアプリにドロップする操作は、macOSでお馴染みです。

iOS 11で、ドラッグ&ドロップの操作が追加された

iOS 11で、ドラッグ&ドロップの操作が追加された。

さらに、macOSのFinderに相当する「ファイル」が追加されました。これまで、作成したファイルはアプリ内にとどまり、アプリが管理するルールでしたが、システム全体で統一して、ファイル管理を行う仕組みを持ちます。クラウドストレージも「ファイル」で扱えるので、PCとのファイル交換がより簡単になります。

Appleは、iPadらしさを突き詰めることが、生産性の向上につながると考えているフシがありました。しかし、iOS 11では、ユーザーがこれまで得た知識や経験値を活かして使える配慮がされています。先のDockやドラッグ&ドロップ操作、ファイルアプリが典型例です。

iOS 11では、Apple Pencilの使い勝手も向上している。

iOS 11では、Apple Pencilの使い勝手も向上している。

macOSのような汎用性を持つことになれば、同時に複雑性も持つことになります。しかし、macOSでは生産性向上の仕組みや使い方は正解が出ています。これをスマートな方法でiOSに取り入れるのであれば、これまで以上のテンポでiPadが生産性向上ツールとして進化するはずです。

着実に歩みを進めるAppleに注目

コンピューターは、いまや当たり前の存在で、多くの人が使うようになったので、概念を変えるような革新さより、これまでに得た知識や経験を活かして使える道具として求められるようになっています。Appleは、iOS 11とiPad Proでこうした要望に応えます。

iPad Proは、複雑になったPCに対するアンチテーゼとして、これまでPCのような汎用性を持つことを拒否していた、と筆者は考えます。そしてここ数年は、それが足枷になっていたかもしれません。今回発表されたiOS 11の仕様は、これまでの戦略を自ら否定して、次のステージに上ろうとする、じつにAppleらしい動きとも言えるでしょう

iPad Proが進化していく過程で、一部のノートPCはiPad Proに置き換わり、新たな流れが造り出されるところが見られるはずなので、今秋リリースのiOS 11を楽しみに待つことにしましょう。

iPad Proならではの使い方ができるおすすめアプリは?

iPad Pro“ならでは”の使い方ができるアプリとは?

12.9インチのiPad Proが発売されてから1年以上が経過しました。ディスプレイの大型化や純正キーボードが用意されたことで「ノートPCの代わりになるのでは?」と期待を集めました。しかし、その期待とは裏腹に、発売当初は画面の大きいiPadとしか使われるケースが多く、ノートPCの代わりは夢物語でした。

これには、ふたつの要因が考えられます。ひとつは、iPad Proの神髄を活かすアプリが揃っていなかったこと。もうひとつは、iPad Proが新カテゴリーの製品にもかかわらず、従来製品と同じ使われ方をされてしまったことです。

12.9インチのディスプレーと純正キーボードに期待しだが、最初は肩透かしをくらうことに

12.9インチのディスプレーと純正キーボードに期待しだが、最初は肩透かしをくらうことに

しかし、時間と供にiPad Proの神髄を活かしたアプリが登場し、これらを使うことで生産性向上のツールとしてiPad Proを見直すときが来ました。

今回は、iPad Pro“ならでは”の使い方ができるおすすめアプリをご紹介しつつ、これが生産性向上にどうつながるか見ていきます。

iPad Proはアナログとデジタルの良さを両立している端末

仕事でiPad Proを使うと言われて、真っ先に思い付くものといえばWordやExcel、PowerPointといった『Microsoft Office』シリーズでしょう。これは以前から、iOS版も公開されており、もちろんiPad Proでも使えます。それに加えてAppleのiWorkもあります。作成した書類の印刷は、AirPrint対応のプリンターであれば心配ありません。

時間の経過とともに、ノートPCでできたことがiPad Proでもできるようになっています。

これだけではなく、iPad Proのメリットを活かしたアプリも登場しています。なかでも、iPad Proをスキャナにする『Scanner Pro』は好例です。

これは、写真を撮る要領で紙の資料を簡単にスキャンできます。スキャンした画像が歪んでいても回転や台形補正機能で修正したり、スキャンした画像の文字をテキストに変換するOCR機能もあります。

12.9インチのiPad Proであれば、スキャンしたA4用紙を同等の大きさで確認できる

12.9インチのiPad Proであれば、スキャンしたA4用紙を同等の大きさで確認できる

加えて『PDF Expert 5』とApple Pencilを使えば、紙に鉛筆で書くような感覚でPDFファイルに書き込みができます。紙の資料のデジタル化と編集から校正まで、iPad Proで完結できます。

スキャンデータの校正も1台で完結する

スキャンデータの校正も1台で完結する

もうひとつ、筆者がお気に入りの『MyScript Nebo』は、Apple Pencilを活用したアプリです。

これは、Apple Pencilで手軽にメモが取れるだけではなく、書いた文字を綺麗に清書してくれます。また、デジタルデータとして蓄積することで、保管のコストを気にする必要がなく、後の検索も簡単になるので、書いたメモの価値を保持してくれます。

MyScript NeboもiPad Proらしいアプリのひとつ。メモ書きの意味を変えます。

MyScript NeboもiPad Proらしいアプリのひとつ。メモ書きの意味を変えます

いずれもアナログとデジタルの良さをうまく両立しています。誰もが知る方法や使い方で、コンピューターのメリットを享受できるのは、iPad Proらしい部分です。

PCを使う時は外付けディスプレイとして活用する

ここまでiPad Proの良さを語ってきましたが、ときにはPCが必要な時もあります。そんなときは、iPad Proを外付けディスプレイとして使う方法があります。アプリは、いくつかありますが、ガイドは『Duet Display』をオススメします。

12インチのMacBookと12.9インチのiPad Proで、Duet Displayを使う様子

12インチのMacBookと12.9インチのiPad Proで、Duet Displayを使う様子

これは、Wi-Fi接続と違いLightningケーブルで接続するので、秒間60フレームで描画され、表示遅延がなく実用的です。たとえば、外出先で込み入った作業をするときに、iPad Proを外付けディスプレイにすれば作業効率が格段に上がります。『Duet Display』は、ケーブル1本でマルチモニター環境を構築できます。使わない手はありません。

古きを知るからこその『Split View』

iOS 9では、生産性向上を目的とした機能が追加されました。なかでも『Split View』は、ディスプレイを分割して、ふたつのアプリが同時に使えます。対応アプリも増えて、iPad Proを生産性向上のツールにする転換点になりました。

『Split View』は、アプリを左右に並べただけに見えますが、ウェブブラウザで調べものをしながらOfficeのWordなどで資料を作成する場合、都度アプリを切り替える必要がなくなるので、作業を効率良く進められます。また、余計な操作をしないぶん、すべきことに集中できます。

Split Viewのおかげで、すべきことに集中できるようになった

Split Viewのおかげで、すべきことに集中できるようになった

『Split View』のタイル型ウィンドウは、macOSなどで使われているマルチウィンドウと比較すると少し古い技術です。しかし、複雑な操作がしづらいタブレットでは、シンプルな作りのタイル型の方がマッチしています。

これは、macOSを古くから開発するAppleだからこその答えでしょう。

あとは、使う側の発想転換だけ

MacしかりAppleの製品は、使う側の発想力に委ねている部分を残しており、これがうまくハマると能力が拡張されたと感じます。iPad Proも似た部分を持っており、これに気が付いたアプリ開発者は“らしさ”を突き詰めたアプリを開発しています。

あとは使う側です。Apple Pencilも使える大きなiPadだったり、PCのように使うのではなく、“ならでは”の使い方を意識することで、iPad Proは高い生産性を発揮するツールとして活用できます。